Archivum 崩壊:スターレイル

雑技

漫才が言葉によって観客に楽しみをもたらすものだとすれば、雑技は体の動きで観客に楽しみをもたらす。

雑技は、仙舟の時代と同じくらい長い伝統を持つ技だ。仙舟人、狐族、持明族は、我々が仙舟で共に住むようになった時から、それぞれの雑技の伝統を持っていた。その理由は簡単だ――いかなる時代、いかなる種族の者であろうと、大道芸をしたり、関心を持ったりする奇特な者がいるからだ。

目がくらむような効果を見せるため、雑技にはさまざまな技術が使われている。鍛え抜かれた腕前によるものもあれば、巧みなトリックによるものもある。往々にして後者の方が効果的だ。考えてもらいたい。持明族が「雲吟法術」を披露したとしよう。確かに過酷な修練が必要だが、特に誰も驚きはしないだろう。持明族は元からこうした不思議な技を使うからだ。しかし、狐族が「雲吟法術」を披露したら、会場中の観客の驚きの視線を集めるに違いない。なぜなら、狐族にそんなことができるとは誰も思っていないからだ。

だから、桂乃芬が仙舟の雑技界に現れた時、観客たちはたちまち沸き立ったのだ。

仙舟の外から来た一時滞在者があれほど多くの雑技の技を身につけただけでなく、長命種ですら習得が難しい技を数多く自分のものにしたのだ…時間を見つけて桂乃芬の公演を見に行くことをすすめる。この天才雑技芸人はさまざまな人の長所を吸収している。その本当の実力を自分の目で確かめてみるといいだろう。

何より重要なのは、短命種である桂乃芬が仙舟のどんよりとした伝統芸能の世界に新しい風をもたらしてくれたことだと思う。彼女は火吹き、剣呑み、碗のせ、傘こぎ、喉での槍の受け止め、胸元での岩割りといった伝統的雑技だけでなく、素手での銃弾つかみ、倒立での麺食い、歯磨きしながら口笛など、独自の絶技を考案したのだ。

私は半生を講談師として生きてきたが、私の話術をもってしても、彼女の才能の1万分の1も伝えきれない…あぁ、読者諸氏におかれては時間を見つけて自身の目で確かめに行ってもらいたい。