Archivum 崩壊:スターレイル

その3

【原文】

君子は努力して氷蟾を駆逐し、恐れながら六龍にむち打った。[注1]
船団は遠い場所を転戦し、魁元は恐れおののきながら天柱を受け取る。[注2]
神の術は多くの秘密に包まれているが、神の実在が現れる。
言葉のために野馬が抜擢され、成長のために涓塵が使われた。[注3]
玉兆と呼ばれる宝石が作られたが、天意をうかがい知ることはできなかった。
帝弓は玉を飲んで尋ねようとし、遍智は夢を南柯に託した。[注4]
知識の海が栄えるのは見ず、血が流れる地獄だけを見る。
残傷や汚染は何と苦しいことか、嗔恚、他化、無記のむなしいことよ。[注5]
走り回りながら叫び、狂ったように太卜を嘲笑する。[注6]
これを笑い、これを嘲り、これを哀れむ。老若男女、人種を問うことなく。
帝弓は急に貴族を叱責し、生を貪っていては昏侯と変わらないとした。[注7]
玉露は横たわるくびきにすぎず、やじりが神の悪に挑むことを教えている。
振り向くと引いた弦から龍の舌がでている。度肝を抜かれて恐れおののく。
ついに寒棺で長きにわたり眠りを守る。かつての英雄を振り返ることはない。[注8]

【注釈記】

[注1] 古の国の神話では、「氷蟾」は月を指し、「六龍」は太陽を指す。ここでは帝弓(仙舟)が宇宙を航行していることを指している。

[注2] 「魁元」とは、仙舟羅浮を指し、同盟の中で頂点に立っていることをたとえている。「天柱」とは建木を指す。この部分は建木の種子が仙舟羅浮の中心で芽生えたことを言っている。ただし、仙舟羅浮は建木を受け取った後に同盟の頂点に立ったので、ここは脚色の可能性がある。

[注3] 古の国の古文書では、「野馬」、「涓塵」は雲や塵埃を指している。この文は倒置法になっており、大まかな意味は「雲や塵埃はすべて建木の成長のために使われた」ということである。記録では、仙舟の民が建木の神体で実験を行った結果、動物が「進化」を遂げ、人類の知能や言語を真似できる「言葉を話して歩く獣」が現れたとされている。この文はそのことを指しているのだろう。

[注4] 「玉を飲んで」は賢者玄曜が玉兆を頭にはめ込み、未来を予知できるようになったことをモチーフとしている。ここは明らかに借用である。「遍智」とは遍智天君のことであり、「知恵」を司る。

[注5] 「残傷」、「汚染」、「嗔恚」、「他化」、「無記」は魔陰の身に堕ちる時の5つの症状である。「残傷」とは、肉体が外界からの暴力によって著しく損傷し、自己治癒能力によって長く苦しい修復を行わなければならないことを指す。「汚染」とは、肉体が不滅であるが故に、何らかの手強い宇宙のウイルスまたは細菌に感染し、長期間にわたって共存することを指す。「嗔恚」とは、恨みや他人を傷つけようとする気持ちが芽生え、激しい喜怒哀楽の中で感情が大きく起伏し始めることを指す。「他化」とは、肉体から変異した器官ができ、人間としての姿を保っていられなくなることを指す。「無記」とは、心が謎の虚無感に支配され、空虚な状態に陥ってしまうことを指す。この部分は帝弓が玉を飲んだ後、仙舟の民が不老長生によって魔陰の身に堕ちる悲惨な未来を見たことを描いている。

[注6] 「狂ったように太卜を嘲笑する」は仙舟の伝説に由来している。伝説によれば、ある仙舟にいた者が建木の神体は宇宙の異物であると考え、長命に反対し、狂ったふりをして意見を表明したそうだ。ここの「太卜」とは仙舟の貴族のことであり、さらには建木の神体をも指している。貴族は仙舟で最も早く神体を受け取った者たちだからである。

[注7] この部分の「昏侯」とは、古の国が統一された時の無名の帝王を指す。帝弓は、仙舟の民が無限の寿命の誘惑に惑わされ、死を恐れて生を貪ろうとした無名の帝王と同じだとして、激怒したのだ。

[注8] この部分は帝弓が不老長寿に反対し、神聖なものと見なされている建木に矢を放ち、自分の決意を示したことを描いている。不死の薬を飲んだ仙舟の貴族たちは驚きと怒りを抱き、帝弓を有罪とした。しかし、英雄のこれまでの功績と人望を恐れた貴族たちは、帝弓に眠り続けるよう判決を下すことしかできなかった。「眠りを守る」とは、仙舟同盟の初航海の時、仙舟の民が一定時間ごとに冷凍キャビンで休眠しなければならなかった制度を指している。「寒棺」とは冷凍キャビンのことである。