【記録日時】星暦
【記録No.】庚酉3号
【飛舸No.】畢方-壱
【ラベル】飛舸;戦地記録;仙舟「円嶠」;鬩壁
【録音テキスト】
……
司辰に告げる。当方の所在宙域は晴れ。強い恒星風を確認。視界内には赤色巨星を除いて、他の天体は見当たらず。
司辰より応答。貴艦の所在宙域にその他の飛行活動は認められず。恒星風により短時間の通信途絶の可能性あり。乱流から距離を取り、飛行姿勢を確保されたし。
現在、貴艦は円嶠に接近中。チャンネル
不要。現在、左方向から右方向へ本宙域を横断中。
……
指定位置へ進入完了。円嶠から応答なし。繰り返す、円嶠から応答なし。
(重いため息)なん…(通信ノイズ)ことだ!彼らの話は真実であったか。
(長いホワイトノイズ)
畢方-壱に告げる。円嶠の損害状況を報告せよ。
(ため息)ひどい有り様だ。
詳細を述べよ。
(長いホワイトノイズ)
(重いため息)もう(通信ノイズ)たくさんだ!彼らが助からなかったことは分かるだろう!あそこから逃げてきた人たちの(通信ノイズ)話じゃ分からないのか!?
(沈黙)円嶠の外観に異常はない。だが、彼らが生還することはできない。彼らは失速し、慣性に従って赤色巨星に落下している。
(長いホワイトノイズ)
救えるはずだった……この通信を構築できさえすれば!
一体なぜ(激しい通信ノイズ)こんなことになった?我々はなぜ(激しい通信ノイズ)こうなってしまったんだ!?
(長い沈黙)あのクソッタレな豊穣のせいだ。なにが恩恵だ、なにが永遠の命だ……
(長い沈黙)それに(激しい通信ノイズ)戦争のせいだ。(激しい通信ノイズ)権力争いのせいだ。
(長いホワイトノイズ)
司辰に告げる。円嶠が視界から消失した。
(重いため息)円嶠のロストを確認した。
……