Archivum 崩壊:スターレイル

その4

【原文】

年月を重ね、浮き沈みする銀河の中に何かがある。
初めて見る穹桑は巨大で、他の星をことごとく呑み込んでいた。
最後尾は霧のような線になり、仙使の持つ武器は霞のようだった。[注1]
襲われると誰もが分かったが、立ち向かう術がない。
木の枝に戦闘艦を貫かれ、金の光が飛舸を揺らす。
窮地を脱するには帝弓を目覚めさせるしかない。絶体絶命の中、奇策で囲みを突破する。[注2]
首領と杯を交わすべからず。ただ、歳陽が肉体を共にすることを願う。
兵士を徘徊させるべからず。ただ、火皇と仇敵を討つことを願う。 [注3]
人の世は一瞬のものに過ぎず、英雄などはいない。
天下の群雄が立ち上がり、雲翳となって大空を守った。[注4]

【注釈記】

[注1] 「霧のような線」、「霞」は豊穣の民の軍隊の規模が大きいことの比喩。

[注2] 侵略を防ぐため、仙舟の民は帝弓を眠りから目覚めさせることにした。目覚めた帝弓は戦局を分析し、奇策で包囲を突破する。

[注3] 豊穣の民を撃退するため、帝弓は忠告を押し切って仙舟朱明の奥にある牢獄へ向かい、囚われ続けている歳陽の首領「火皇」を説得する。そして自らの肉体と引き換えに歳陽の助けを借りるという取引をした。

[注4] それぞれの仙舟では、大勢が英雄の献身に応え、英雄と同じ取引をした。彼らは決死隊に加わり、歳陽と手を組んで行軍し、空を覆う雲のように仙舟を守り、決して地上に降り立たないと誓った。これが「雲騎軍」の名前の起源である。

[付注] 
ここでは血戦時代(およそ星暦5000年から星暦8000年)の「三劫」の1つと言われた「火劫」について描かれている。当時、仙舟朱明はある大質量の天体の引力を観測したが、いかなる光信号も捕捉できなかった。仙舟同盟が十分に近づいて初めて、観星士はその巨大な物体が星々を呑み込むダイソン・ツリーであり、古の国の時代の大敵、造翼者の故郷「穹桑」であることに気づいたのだ。
視肉の巨獣艦も再び現れたことで、仙舟の民はさらに震撼した。造翼者は視肉を操り、両者の間にはある種の共生関係が成立していた。そして、「建木」の力に引き寄せられるかのように、「穹桑」は仙舟「羅浮」にゆっくりと近づいた。やがて両者の間に仙舟史上、最も壮絶な戦争が勃発する。
これまでに鬩牆の戦い(「三劫」の1つである「生劫」)、金人の裏切りと移住計画を経験したばかりの仙舟の民には、これほど大きな危機に立ち向かう力は残されていなかった。民衆は凍結監獄の全囚人を目覚めさせて解放した。その中にはこの詩の主人公である帝弓も含まれていた。