䔥蕾姉さん、お久しぶりです。
家を出て一ヶ月余り、全てが順調です。姉さんはご安心ください。
僕は幼い頃から体が弱く、いつも姉さんに心配をかけていました。此度は挨拶もせずに離れましたが、決して自死などしようというつもりではありません。ただ、これ以上姉さんに迷惑をかけたなかったのです。姉さんには安楽な生活を送って欲しいのです。
この「仰天望気の疾病」のせいで、父と兄が戦死するまでは彼らに迷惑をかけ、今では姉さんの生活を妨げている。二百年以上経ちましたが、いくら医士を訪ねても治らなかった。振り返ると、そこには伝えきれない自責の念しかありません。
でも、もう心配する必要はありません。僕は今、丹鼎司のとある機密計画の臨床試験に参加しているんです。
僕たちを担当する丹士長の話によれば、仙舟で人々を何百年も苦しめる慢性病を治療するため、彼らはやっとのことで六御の許可をもらって、新しい療法の開発を認めてもらったらしいのです。
でも、彼らは研究が進展し何らかの結果が出るまでは、関連情報を厳格に封鎖するとも約束しました。だからこの手紙も、暫くは僕が持っていなきゃいけない、いつか外で活動できるようになった時に、姉さんに送ることにします。
治療手段はかなり有効で、いつもは杖を使ってやっと歩ける程度だったのに、今では好きに歩き回れる。丹士たちも僕の回復に驚いていたんだ、僕は「万に一つの奇跡」だと。
そういえば、ここで使ってる薬、けっこう変わってるんです。丹士長に薬の名前を聞いたら、その人は笑いながら「これは慈悲深い薬王の恩典だ」、と言っただけ。何の意味かは分からなかったし、丹士長もそれ以上説明するつもりはなかったみたい。
どうであれ、この薬は効くから、それでいいと僕は思っています。でも、これには代償があるのです。あの丹薬を服用する度に、全身が刺されたように痛み、記憶も混沌とする。
こんなことを姉さんに教えるべきじゃない、やっぱりいい知らせを言うことにします。臨床試験が終わったら、丹鼎司から多額な協力金がもらえる。
その時は、僕は健康な体と十分な資金を手に入れられます。そしたらいい場所の客舎を買おう。
大都市の埠頭が一番いい、そこで観光客を相手にした客舎を経営しよう。姉さんももう苦労する必要はない、うちはお金持ちになるんです!従業員を何人か雇って、僕も働くから、姉さんはやりたいことをやればいい。姉さんはそういう生活を送るべきだよ。
じゃあ、また会う日を楽しみにしています。