Archivum 崩壊:スターレイル

(その2)

……

帝弓の司命よ、私の話に耳を傾いてくださいませ。

雨菲は戦場に行きました。

これは同盟と豊穣の民との3回目の戦争。私が知っている多く人が戦争に駆り出されましたが、まさか雨菲まで招集されるとは思いもしませんでした。

「同盟には優秀な医者が必要なの。あいにく私は優秀な医者だから、仕方ないじゃない!」と雨菲は私の顔に手を添えて、わざと軽い口調で言いました。

私は雨菲の手を握り、切羽詰まって言いました。「羅浮には医者がたくさんいる、あなたじゃなくてもいいじゃありませんか。あなたは雲騎でもないし、断ってもいいはずです……」

「私のことを心配してくれているのは分かる、」雨菲は優しく話しかけてくれました。「私は軍医として附いていくだけだから、危険に晒されることはあまりないと思うよ。それに、帝弓が必ず私を見守ってくださるはず」

彼女はすでに心を決めたのです。私はすがるように彼女に言うしかありませんでした。「あなたはご立派だから、私がいなくても生きていける。しかし弱虫な私は、あなたのいない世界でどう生きていけばいいか分かりません。ですから、必ず帰ってきて」

雨菲は仕方ないという風に笑って言いました。「私もあなたがいないといけないのよ!心配しないで、必ず帰ってくるから」

彼女は私の手を放しました。私は地面にしゃがんだまま、小さくうずくまって、手で両耳をふさぎ、彼女の立ち去る足音を聞く勇気すらありませんでした。

帝弓の司命よ、彼女が無事に帰ってこられるよう守ってあげてください。

……

長楽天の都市部で魔陰の身に堕ちた事件が発生し、かなりの被害をもたらしました。十王司の判官より、魔陰の身に堕ちた遺体の解剖依頼がありました。

解剖結果に気になる点があり、ここに記録を残します。

この人は生前天欠者で、手足がなく先天性心臓病を患っていました。しかし解剖の結果、魔陰の身に堕ちた後はそれらの欠陥が消えていたことが分かりました。

彼の手足は牛よりも丈夫で、心臓は星槎のエンジンのように力強かった。文献で似たような記述を時々見かけましたが、実際目の当たりにすると、やはり衝撃です。

どうやら、天欠者の治療法の一つを私は意識的に無視してきたのかもしれません…それはつまり、寿瘟禍祖の力を抱擁する方法。確かに、歩離人について「天欠者」のことを聞いたことがありません。

寿瘟禍祖の力を危険なく利用する方法があるのかもしれません。

勿論、これはただ机上の空想で、そのような実験を行うのは、死罪にも値するでしょう。

念のため、この日記を調査する十王司の判官へ:以上の内容は私の空想であり、それを実践に移す計画はありません。

……

この頃は雨菲とよく連絡を取り合っています。

彼女がいるのは戦地後方の野戦病院で、割と安全とのこと。

それでも彼女のことが心配ですが、黙々と祈るしかありません。

帝弓の司命よ、彼女の安全を見守ってあげてください。

……

戦争が終わりました。私たちは勝ちました。雨菲は死にました。

なぜ後方の野戦病院にいた彼女が死んでしまったのか、どう考えても分かりません。

私は狂ったように雲騎軍に原因を問い詰め、やっと教えてもらうことができました。

帝弓の司命が世に降臨し、神の矢で歩離人の艦隊を殲滅した時、神の恩恵により「付加的な傷害」が加えられました――その傷害を負った一つに、雨菲のいた野戦病院がありました。

彼女は豊穣の民ではなく、帝弓の司命の神の矢によって、骨の灰さえ残らず消されてしまったのです。

帝弓の司命よ、どうして?

……

帝弓の司命よ、これは私からの最後のお願いです。

あなた様が滅ぼさんとするすべてのものが生き返りますように。

あなた様が生かさんとするすべてのものが滅びますように。

この地のすべての生き物があなたの意志に反して育ちますように。

宇宙のすべての星があなたの存在のせいで光が消えますように。

この銀河が、死滅ではなく、生命を育みますように。

同盟があなた様の期待とは別の形で永遠に生き長らえますように。